冬の難敵 真琴の健気

〜via glacialis〜



 アイスバーンを登りたい真琴さん。
 しかしアイスバーンはつるつる滑って登れない。
 この道を登らないと保育所に行けない。
 これはいけない、いただけない。秋子さんは真琴が保育所に行けなかったとしても怒らないだろうが、きっと悲しそうな顔をする。
 だから真琴は頑張って、この坂道を登るのだ。

 ガードレールに掴まって、うんしょうんしょと登りだす。少し進む。
「あはー」
 明るい笑顔が輝く。
 だけどちょっと手が疲れた。少し休もう、そう思って手を離すと滑りだす。
「あぅー」
 つつー。足のブーツは悲しいくらいにグリップが無い。慌ててガードレールに掴まった。
 そのまま真琴はうんしょうんしょと登りだす。少し進む。
「あはー」
 明るい笑顔が輝く。
 だけどちょっと手が疲れた。少し休もう、そう思って手を離すと滑りだす。
「あぅー」
 つつー。やっぱり駄目だ滑るのだ。慌ててガードレールに掴まった。

 5回も同じ事を繰り返し、全く進んでない事に気付く。
 しかし進むも退くもままならぬとは正しくこの事。

 その日その手を保母さんに引いて貰って保育所に泣いた真琴が現れたのは、実はそういう事情があったからなのです。



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